先週までの全4回のブログで、「部下から相談される上司になるために何ができるか」をお伝えしてきました。書きながら、キャリアコンサルタントとして、相談を受けることを仕事にしている私自身は、どう聴いているのだろうかと思いました。
あらためて考えてみると、キャリアの相談を受けているときの私は、意識的に3つの立場を行き来し、立場を入れ替えて聴いています。今日は、この3つの立場についてお話ししたいと思います。

1つ目:友人のような立場
相談に来てくださる方には、いろいろな方がいます。大きく分ければ、社内制度としての「キャリアコンサルティング」を指名されて受けに来る方、社内制度を利用して自分の意思で相談に申し込んで来る方、個人として自分で費用を負担して相談に来る方です。いずれも1回のみの相談もあれば複数回のこともありますが、私は、初対面であっても、友人のような気持ちで向き合っています。
そうだからでしょうか。相談が終わって何年経っても、ふと「あの方は元気にしているかな、どうしているかな」と思い出す方がいます。1回、しかも1時間ほどしか話していないのに、普通の友人と同じように思い出す人がいるというのも不思議なものです。人が好きで、人の生き方に関心があるから、この仕事をしているのだと思います。だから、相談者の存在は、相談が終わってもずっと私の心に残っています。
この立場は、専門性とは関係ないかもしれません。でも、私はここが自分の土台だと考えています。本音を話してもいいと思ってもらえるかどうか。その安心感は、いろいろなスキルより、まず目の前の人を大切にしたいと思う気持ちが伝わるかどうかにかかっていると思うからです。
2つ目:組織の視点を届ける立場
相談者の多くは、どこかの組織で働く社員です。悩みは、その方自身の目線から語られます。例えば、「評価されない」「上司にわかってもらえない」「この働き方を続けていいのか」といった悩みです。
その悩みを受け止めながら、私はもう一つの視点で話を聴いています。もし経営者だったら、管理職だったら、同僚だったら、後輩だったら、この方の悩みや行動を、どう理解し、解釈し、受け止めるだろうか。プラスに映る面もあれば、マイナスに映る面もあります。
たとえば、一生懸命がんばっているのに評価されない、という悩み。ご本人の努力は、本人の視点では偽りはないことがほとんどです。でも、その努力が上司や周囲の視点からどう見えているかを、アドバイスするのではなく、問いかけや質問をしながら一緒に眺め、言葉にしてもらうと、ギャップが見えてきたり、伝え方に工夫の余地が見つかることがあります。これは、相談者本人ができていないということを責めるためではありません。相談者の組織への貢献が正しく伝わり、周囲からの評価が上がることは、ご本人にとっても、組織にとっても、良いことだからです。
この視点を持てるのは、私が管理職の方々の相談も受け、部下育成の研修の場で一緒に部下育成の方法を検討してきたからだと思います。上司の側にも、部下に伝えきれていない期待や、言いたくても言えずにいることがあります。その両側を見てきたので、片側(部下の側)だけでは見えない景色を、相談者に見えるように伝えられることがあります。
相談者の見ている景色、感じていることに寄り添うことと、相談者が組織の視点を持てるように関わることは、矛盾していません。私は、その両方を持って関わることで、相談者がより客観的に自分の立ち位置や言動を振り返る支援をしたいと思っています。
3つ目:キャリア支援者の立場
相談の内容は、就職、転職、異動、昇進や昇格、子育てや介護や治療や学びとの両立、人間関係、ハラスメント等、さまざまです。
キャリアコンサルタントとしての立場で私がすることは、その方が抱える具体的な課題に対して、やりがいや満足度や充実度を上げるための選択肢を一緒に検討し、決断を支えることです。一方的なアドバイスをすることはまずありません。ご本人のなかにある答えを引き出し、ことばにして、自分で決めて動けるように関わります。
この立場は、いちばんキャリアコンサルタントらしく、専門的に見えるかもしれません。
この3つの立場は、行き来するからこそ意味をもつ
大切なのは、この3つを別々に使うのではなく、一つの相談のなかで行き来していることです。
友人のような立場で安心して話してもらい、キャリア支援者として選択肢を一緒に整理する。そして、その選択が組織のなかでどう受け止められるかという視点も提示する。この3つが重なるからこそ、その相談者固有の状況、考え方、気持ちに合った解決策をともに検討する時間がもてるのだと考えます。
今は、ネットや生成AIで、たくさんの情報を得ることができます。自分に合ったアドバイスも得られることでしょう。でも、一人の人として心に留める相手が目の前にいて(対面でも、オンラインでも)、自分の思考の枠とは違う枠で問いかけ、組織の視点も踏まえて、相談者が自分で決めて動けるよう一緒に考える関わりができるのは、人間ではないでしょうか。3つの立場を行き来しながら支援する。これが、私が提供しているキャリアコンサルティングだと考えています。



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