
女性活躍を阻む壁は、大きく3つ「無意識の思い込み、長時間労働を前提とした働き方、配置・育成・勤続の偏り」です。この3つはいずれも、長い年月のなかで作られてきた組織のしくみや風土なので、会社として変えていかなければ変わっていきません。よく言われることですが、経営トップが「なぜ自社が女性活躍に取り組むのか、そのために何をどう変えていくのか」を、社内の雑音に惑わされずに揺らがずに伝え続けることが推進力となります。
今日は、経営トップの方針・強い意思のもと、それぞれの職場で管理職と女性社員自身が取り組めることを書きたいと思います。それは、私が女性活躍支援の一番の鍵としてこだわっていること、「女性社員を孤立させない」ということです。
女性活躍が進んでいく中で、女性社員が苦しむのは、自分の中というより、周囲との関係であることが多いのです。「なんであの人ばかりに仕事を任せるの?」「時短勤務のあの人がいるから、周りの私たちの負担が増えているのに…」―そうした声にひとりで耐えられる人ばかりではありません。本人だけに「周りは気にせず頑張って」と言うのは、ある種の責任放棄だと私は思います。本人を孤立させない環境をつくることは、上司(管理職)の役割です。
では、孤立させないとは具体的にどういうことか。私は、縦・横・斜めの3方向のつながりを、管理職が意図をもって働きかけてつくることだと考えています。
縦のつながり―教え、相談できる相手
縦は、教育や相談を目的としたつながりです。同じ部署で社歴の長い人、同じ担当業務で経験を厚く積んでいる人。仕事の進め方に迷ったとき、評価や昇進に不安を抱えたとき、「この人に聞けばいい」という相手がいるかどうかで、本人の踏ん張りはまったく違ってきます。
ここで管理職に求められるのは、本人任せにしないことです。「困ったら誰かに聞いてね」では、忙しい職場環境、遠慮しがちな人はなかなか聞きにくいものです。誰に何を相談すればよいかを具体的に橋渡しし、相談すること自体を歓迎する空気をつくる。これは小さなことのようでいて、本人の安心を大きく左右します。
横のつながり―共感し、協力できる仲間
横は、共感と協力を目的としたつながりです。同期、業務経験がほぼ同じ人、同じ立場の女性社員。「悩んでいるのは自分だけではない」と思えることが、どれだけ支えになるか。これは、一対一の上司面談だけでは決して得られないものです。
両立や昇進の悩みは、評価する立場の上司には言いにくいことも少なくありません。だからこそ、利害なく本音を話せる横のつながりが必要です。管理職が、同じような立場の社員同士が出会える場を意図して用意する――それだけで、本人が抱え込まずに済むようになります。
斜めのつながり―異質と出会い、視野を広げる
斜めは、異質や共創を目的としたつながりです。業務で関わりのある他部署の人、直属ではない管理職、社外の人、あるいは業務とは関係なくても何らかの共通項を持つ人。
このつながりは、何より本人の視野を広げます。「この組織の、この上司の下が世界のすべて」ではないと知ることは、キャリアの選択肢を大きくします。直属の上司一人にすべてを背負わせない、という意味でも、斜めのつながりは効きます。管理職が、他部署や社外との接点を意図してつくることが、ここでは支援になります。
管理職がつながりを橋渡しする
つながりは、自然発生的にできることを期待してはいけません。管理職が、どのような意図をもって誰と誰をつなぐかを考え、自分の経験やネットワークを駆使して、橋渡しをしていくことが欠かせません。取り組みの意図を職場全体に自分の言葉で説明する、両立を前提とした働き方は組織として認めていると明示する、そして本人を縦・横・斜めのつながりの中に置く。こうした働きかけは、業務経験などが豊富な上司(管理職)だからこそ、できることです。
加えて、女性社員ができることもお伝えしたいと思います。つながりをしっかり活用することで、そのつながりの価値を上げていくことです。そして、そのつながりに、後輩や他部署の必要としている人をつなげていくことで、組織全体に、「女性社員を孤立させず、つながりの中で支える」という新しい文化を根付かせていくのです。この女性社員の果たす役割も重要です。
この新しい文化の影響は、女性社員本人の活躍度が上がるだけにとどまりません。離職率の低下による採用・引き継ぎコストの削減、安定的な組織運営、そして社員全員にとっての働きやすさと貢献意識の向上につながっていきます。女性活躍支援での試行を組織全体のしくみにつなげていく、そのような取り組みが女性活躍支援に取り組んでいる管理職から始まっています。



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