私は、女性のためのリカレント教育を提供している、日本女子大学リカレント教育課程で、「再就職のためのキャリアアップコース」の必修授業「キャリアマネジメント1」の講師とキャリアカウンセラー(キャリア相談、再就職相談)をしています。

日本女子大学リカレント教育課程「再就職のためのキャリアアップコース」とは
4年制大学または短期大学を卒業し就労経験を有する女性たちが入学試験を経て入学し、1年間の学びを通して再就職を目指すコースです。詳細は、日本女子大学リカレント教育課程「再就職のためのキャリアアップコース」をご覧ください。
日本女子大学リカレント教育課程には、働く女性を対象とした「働く女性のためのライフロングキャリアコース」「次世代リーダーを目指す女性のためのDX人材育成コース」もあります。

現状、女性が働き続けることと退職・再就職することは表裏一体で、本人の意思以上に、会社・職場の状況、家族の事情、子育て・介護、女性特有の健康課題等、運や巡り合わせに左右されることが多いのが実情です。退職・再就職することになった場合、再就職活動については公的機関による無料職業紹介・再就職支援を受けることができます。また、資格やスキルと習得する目的であれば、E-Learningや通信教育、資格スクール、ビジネススクール等があります。

再就職のために、有料の大学リカレント教育を1年受ける意味や価値はどんなところにあるのでしょうか?

女性たち自身が働き続けるための(または働くを再開するための)知恵と力をつけられるリカレント教育は、女性のエンパワーメント(主体となる力をつける、自信をつける)とピアサポート(仲間同士・同志の支えあい)の場として、意味と価値があると考えています。

女性のためのリカレント教育の意味と価値について、「再就職のためのキャリアアップコース」に携わるなかで私が実感していること踏まえて具体的にお話ししていきます。※大学の見解ではなく私の個人的な見解です。

1.女性限定であることで、女性が就労を継続していくための対応策のバリエーションを学びあうことができる

女性の就労継続は、家族の事情(夫の転勤や繁忙等、親の日常的・突発的なケア等)、子育て・介護、女性特有の健康課題(例えば、月経、妊娠・出産、更年期)、会社の女性活躍の度合いや組織風土による女性特有の働きにくさ等に影響を受けます。経験も状況も価値観も多様である女性たちはお互いの状況を、「女性であれば誰にでも(自分にも)起こりうること」だと認識しています。

男性がいないので話の横取りが起こらず、また表面的な解決策のアドバイスで水を差されることがありません※。健康課題も含めて本音で話すことができ、共感的に理解し、自分ごととしてどう対処したらいいかを考え、お互いに学びあうことができるのです。
※男性でも共感的理解力が高い人、聴く姿勢のある人もいますが、ここでは「マンスプレイニング《 man(男性)とexplaining(説明する)を合成した造語で、女性の側が説明を求めているわけでもないのに男性が上から目線で説明する振る舞いを表す 》」を指しています。

2.再就職をするという共通の目標があることで、ハードな学びに対するモチベーションを保つことができる

再就職という共通の目標(キャリアの通過点)があること、また上記「女性限定であること~」に書いたように、就労継続しなかった(できなかった)状況・事情をお互いに理解しあうことで、再就職に向けた同志の気持ちが芽生え、ハードな学びに対するモチベーションを保つことができます。

3.1年という時間をかけたハードな学びと人との交流が”感情の消化”の時間となる

退職した経緯と再就職までの過程に納得感をもっている人もいますが、悩み続けて決断したものの、本当によかったのか、もっとできることがあったのではないかと考えている人も少なくありません。そういったモヤモヤとした感情の「消化」の時間になることがもっとも意味と価値が高いものだと私は考えています。消化しないとくすぶり続け、いつかまた悩む時間が増えていくからです。

悩んでいる人は、悩みで頭の中がいっぱいで立ち止まってしまっている(行動が減ってしまっている)ことが多いものです。学びの予定が詰まっていることで、悩んで立ち止まっている時間を強制的に減らせることに意味があります。行動すれば必ず得るものがあるので、無力感や喪失感を感じることが減るだけでなく、自信をもつことができるのです。

そして、キャリアマネジメントをはじめとした授業では、双方向・多方向の対話が組み込まれています。その延長で、学びの合間に受講生同士で会話をします。1年という時間、学びをともにすることで、会話・対話はお互いの生き方、生き様が感じられる深い会話・対話になっていきます。

話すことで感情を手放してみようという気持ちになる、聴くことで新しい感情を手に入れる(違う見方、意味づけができる)。一人で悩み、考えるだけでなく、人との交流・分かち合いを通じて、過去のしがらみや負の感情を消化することができます。自分は完全に消化するまでには至らなくても、消化して乗り越えていく人が目の前にいると、いつかは自分も乗り越えられるかもしれないという気持ちを手に入れることができます。

女性のためのリカレント教育の意味と価値について、「再就職のためのキャリアアップコース」に携わるなかで私が実感していることをお話ししました。

「再就職する女性」を対象とするコースを例にしましたが、「働く女性」を対象とするコースでも同じ意味と価値があると思います。女性が働き続けることと退職・再就職することは表裏一体であるとお話したように、女性たち自身が働き続けるための(または働くを再開するための)知恵と力をつけられるリカレント教育は、女性のエンパワーメント(主体となる力をつける、自信をつける)とピアサポート(仲間同士・同志の支えあい)の場として、意味と価値があると考えています。

2025年3月8日(土)、日本女子大学リカレント教育課程 修了式に列席しました。毎年感じることは、学びは人を内面から輝かせるものだということです。修了生の皆さん、おめでとうございました。さまざまな道に進んでいかれる皆さんを応援しています!

女性のためのリカレント教育を修了して再就職した女性たちは、若手女性たちのロールモデルとなり、働き続けることの悩みを受け止め、一緒に考えることができる人材です。加えて、自分のお子さんや地域の子どもたち、職場の男性にも、女性が働き続ける苦労と喜びを伝える語り部ともいえる存在だと思います。

リカレント教育に携わり、女性活躍を支える仲間として修了生を社会に送り出すことができることを嬉しく、心強く思っています。

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