この記事は、作成日から6年経過しています。内容が古い可能性があります。またこの記事は、大幅なデザイン変更前に書かれたものですので、レイアウトが崩れている可能性があります。ご了承ください。
高校生が”育児休業の取得に反対する上司を説得する”ロールプレイング
ある高校の家庭科で「夫婦共働きの男性社員が育児休業取得するという設定でロールプレイングをする」という授業があるそうです。
高校の家庭科でロールプレイング?!おまけに、夫婦共働き、かつ男性が育休を取るという設定!なんと先進的、実践的!当然、男性社員の上司は、「男性が育児休業を取得するなんて、あり得ない」という立場の設定だそうです。よくある職場風景を見ているようですね。
育児休業取得と職場の現状
男性の育児休業取得率は、2017年度で5.14%。男性の育児休業取得率の政府目標は2020年に13%。取得率は上昇傾向ではありますが、道のり半ばといった状況です。
男性からは、このような声も聞きます。
- 忙しすぎて、男性である自分が育児休暇を取りたいと言い出す雰囲気ではない
- 休んでしまうと仕事が溜まってしまい自分の首を絞めるので仕事を休みたくない(休めない)
- 女性の育児休業取得者が多い組織で男性である自分まで休暇を取ってしまったら会社がまわらなくなる
- 育児休業をとると、職場の居心地が悪くなったり、昇進に響きそう
上司を説得してまで、社内の当たり前に抗ってまで育休を取るんだ!という強い意思がないと、突破できそうもありません。だから、男性の育児休業は、数日や1週間といった短期のことも多いのですね。(実際、私も次男のときは産休だけで仕事再開しています。業務委託の仕事を失いたくなかったという理由で。)
5.14%という数字は、育児休業を取得したいと思う男性は増えているものの、まだまだその希望を伝えにくい職場・上司、希望を伝えても受け入れられない、そのような職場・上司が多いことを示しているのでしょう。
それは、職場や上司個人の意識の問題だけでなく、職場全体の仕事のしかたや業務分担、お客様の要望に合わせた働き方(残業の多さ)など、職場全体・会社全体で解決に向けて取り組んでいく必要がある課題と言えます。
若者の意識・価値観の変化
この高校生ようなロールプレイングを経験した高校生がパパママになるのは、5~20年後くらい。若い世代の意識・価値観は、確実に変化していくことと思います。実際、今の20代の意識は変化しています。学生の就職活動の場面でも、会社説明会で男子学生が育児休業取得実績やワークライフバランスの質問をするという事例を聞くようになりました(まだ、珍しいから話題になるレベルですが)。
どんどん、当たり前が変わっていく時代。若者は、上記のような学校教育の効果だけでなく、自分たちの生活に対する切実な不安(給料が上がらない、雇用の不安定さ、子どもの教育費負担など)も加わり、共働きを続けていきたいと望む人が増えつつあります。
少子化、働き手不足という社会構造の変化も後押しし、家庭(家事、子育て、介護等)は女性のものという価値観も変わりつつあるのです。
多様な人材が活躍できる職場づくり
40代~60代の役員・管理職の男性は、ご自身のパートナーは専業主婦という方が多い世代です。実際、共働き、男性の子育て参加などは、知識としては理解していても、感覚的には理解できない方もいらっしゃいます。だから、ふとした拍子に悪気なく、たとえば、「男が育児休業だなんて、信じられない。」「忙しい時期に妊娠するなんて困るなぁ。」など、マタハラ(マタニティハラスメント)やパタハラ(パタニティハラスメント)発言をしてしまう人がいるのです。
マタハラ、パタハラを放置しては法律違反ですし、ダイバーシティの観点からもNGですが、こういった発言をしている当人は、自分が当たり前だと思っていた性役割分業の価値観のままに、発言してしまっていることもある、不用意に。悪気がないのだからいいでしょということではありませんが、それを”おかしい”と一方的に責めるだけでは、お互いの溝は深まるばかりです。一方で、管理職も、最近の若者は・・・と言っていては、何の解決にもなりません。
職場に多様な人(子育て・介護・病気、国籍など)がいることが当たり前の時代。結婚したい人も、したくない人もいる。夫婦共働きをしたい人も、したくない人もいる。子どもが欲しい人も、欲しくない人も、望んでも叶わない人もいる。育児休業を取りたい人も、取りたくない人もいる。
どうしたら組織として、仕事の質を落とさない前提で、お互い様で協力していけるのかを職場で考えていくことが求められています。だから私は、マネジメント研修やハラスメント研修、ダイバーシティ研修で次のことを必ず伝えます。
- これだけ価値観が多様化している時代に、すべての価値観を深く理解し、あらゆる方面から間違いのない発言ができると思い込むのは危険だという前提に立つこと。
- そのうえで、管理職が日ごろから職場で、「自分の発言で、何か違うな、おかしいな、嫌だなと感じることがあったら、遠慮なく教えて欲しい。」と伝えること。
知識不足からハラスメントが横行している職場を放置するのは論外ですが、ハラスメントを恐れて職場内のコミュニケーションの量と質が下がるのでは、本末転倒です。コミュニケーションの量を増やし、そこで気づいた相違点は率直に話し合う。
そのような職場づくりのためには、管理職だけでなく全員が”多様な価値観を受けとめる、違う意見を受けとめる”よう、努力すること。受けとめようと思っても、心のなかで”カチン”とくることもありますね・・・、違う時代を違う環境で生きてきた人の集まりなのですから。そういった感情があることもまた、当たり前のことだと受けとめられるよう、私自身も努力が必要だと自覚しています。
コメント