上司が部下を「見る」とは、ただ眺めることではなく、相手を意識して関心を寄せる能動的な行為です。そして、職場で「自分は見てもらえている」という感覚は、安心感や働きがいにつながります。

では、部下が「自分は見てもらえている」と感じられる上司の伝え方とは、どのようなものなのでしょうか?また、上司が「見ている」ことを部下に伝えることは、人と組織にどんな意味をもたらすのでしょうか。私が出会ったある場面をもとに、考えてみたいと思います。
ある社員が上司からかけられた声
ある社員は、社内調整が複雑な難しい案件を任され、行き詰まっていました。他部署からなかなか協力が得られず、うまくいく気がしなくなってきた頃、上司からこう声をかけられたそうです。「他部署のAさんから、あなたの頑張りを聞いているよ。今度の勉強会で、これまでの取り組みを発表してもらえないかな。大事な案件だし、仕事の進め方などが他のメンバーの参考になると思うんだけど、どうだろう」。
この場面での声かけから、「見ている」ことが伝わる伝え方と、「見ている」と伝えることの意味を見ていきましょう。
「見ている」ことが伝わる伝え方と、「見ている」と伝えることの意味
1. 具体的な事実を挙げて伝える
「がんばっているね」という抽象的な言葉より、「Aさんから、あなたの頑張りを聞いている」と具体的な事実を挙げるほうが、「ちゃんと見てくれている」と相手に届きます。具体性こそが、本当に見ていたことの証になり、承認として届きます。
2. 結果が出ていなくても、過程の頑張りを伝える
うまくいく気がしなくなっていた社員に届いたのは、案件の成否という結果への評価ではなく、過程そのものへのまなざしでした。結果が出る前の頑張りを見て言葉にする。だからこそ、行き詰まっていた人も前を向けるのだと思います。
3. 職場全体に「価値」として共有する
「発表してもらえないかな」という言葉は、本人をねぎらうだけでなく、その取り組みが職場全体の学びとして価値があることを伝えています。本人の頑張る姿を他のメンバーは「見て」、意欲が引き出されていく。「価値」が共有できると、それを「見る」人が増え、さらにお互いの意欲を高め合うのです。
「見ている」ことを伝えたことが起点となって、人や組織が変化していく
雰囲気のいい職場、上司に気軽に相談ができている職場には、部下のことをよく見ている上司がいます。「見ている」ことを伝えたことが起点となって、人や組織が変化していきます。「見て」気づいたこと、それが小さな変化であっても、具体的に、そしてねぎらいや期待を添えて伝える。その小さな積み重ねが、人と職場を育てていくのだと思います。



コメント