男性の育児休業取得率の高さの本質は、目の前の仲間を大切にしたい思い

 共働き・共育て=男女ともに仕事と家庭・子育てを両立する、したいと希望する夫婦が増えています。若い世代では、「仕事か家庭か」ではなく、「仕事も家庭も」という価値観が男女問わず浸透していて、よりよい両立環境を求めて、男女問わず転職を考える時代です。両立の悩みに男女差はありません。

 育児休業を取得した男性に話を聞くと、「上司や同僚が育休を取っていたので、自分も育休を取りたいと言い出しやすかった」、「人事が上司に、会社として男性育休取得率100%を目標としているから、希望しているならば必ず取得させるようにとプッシュしてくれて助かった」という声があります。確かに、自分が言い出しっぺになる、自分の生き方の希望を伝えることは、勇気がいりますね… ましてや、これまでの当たり前と違う行動を取ると、会社からどう評価されるのか不安になるのは当然だと思います。

 令和5・2023年度 男性の育児休業取得率(厚生労働省「雇用均等基本調査」)は30.1%で、過去最高となりました。『CSR企業総覧』編集部による男性の育児休業取得率ランキングをみると、男性の育児休業取得率100%の企業もかなり増えていることがわかりますが、男性育休取得率が過去最高でも30.1%であるということは、男性が取りたくても取りたいと言い出しにくい、取りたいと言っても許されない職場がまだまだ多いということです。

 でも、私は組織・企業が変わっている現実に希望をもっています。管理職の声を聞いていると、「自分の時代は子育ては妻に任せっきりが当たり前で、妻はキャリアを諦め、子育ての苦労を一手に負わせてしまった」、「自分は子育てに関わりたくても仕事中心で関われなかったので、部下たちは育休を取ってもらいたい」というように、本当はもっと家族との時間を取りたかった人も多いと感じます。

 そういった管理職の方々は、性別を問わず、部下の育休取得と育休復帰後の両立を真剣に支援しています。業務の削減、分担の見直し、プロセスの見直し、柔軟な働き方(運用で工夫)等、どうしたら部下が転職を選ばずに済むか、その人がもっている力を発揮できるかを部下とともに考え、実行されています。会社の制度はすぐに変えられなくても、柔軟に運用で対応されています。そういった管理職の方々は、特別なことをしていると思っておらず、人として当たり前の、目の前の仲間を大切にしたい、一緒にいい仕事をしていきたいという思いをもって取り組まれています。そして、両立を希望する人もまた、いい仕事をしていきたいという思いを持っています。

 男性の育児休業取得率の高さの本質は、目の前の仲間を大切にしたい人たちの思いだと私は思います。

男性育児休業の取得率を上げることに会社として取り組んでいる企業もあります。数字先行の取り組みですし、ある意味強制力を働かせた取り組みであるのは事実です。でも、形から入ることで、組織の当たり前が変わっていき、人が本来もっている、人として目の前の仲間を大切にしたい思いを果たしやすい環境ができてくるのは、よいことだと思います。

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